春の移ろい

 

 

鉢植えの梅の花が咲きそろいました。いよいよ春を迎える季節となりましたね。
塾では、季節の移ろいを楽しんでもらおうと、教室の前に梅の鉢植えを置いてみました。

現在は、花の代名詞といえば「桜」ですが
奈良時代は、「梅」を指していました。
それは何故かというと、
梅は古来より、日本に自生していた木ではなかったんですね。
当時の日本は、遣唐使による中国との交易が盛んで、大陸の影響を大きく受けていました。そして、文化や物品が数多く日本に伝わってきましたが、その中の1つに「梅」がありました。

この香り立つ舶来の花は、当時の貴族の人々に珍重され、梅を愛でながら優雅な歌会も開かれました。奈良時代に編纂された日本最古の歌集『万葉集』に、実に多く梅の花を読んだ歌があることでも窺えますね。

その後、平安時代に入ると
遣唐使の廃止により、日本独自の文化が生まれるようになりました。かな文字に象徴される「国風文化」ですね。
このときを境に、花といえば「桜」を指すように変わっていったのです。
平安初期に編纂された『古今和歌集』では、梅を詠んだ歌に比べ、桜を詠んだ歌が多く登場します。

『万葉集』も『古今和歌集』も、今からざっと1200年も前の歌です。
しかしながら、時の移ろいの中にも花を愛でる日本人の心は、今も昔も移ろいゆくことはないのですね。